気仙沼復興支援素材「サメアテロコラーゲン」開発ストーリー
海洋素材の利用に着目した 国産初「サメアテロコラーゲン」
1990年代後半のBSE問題をうけ、化粧品原料は哺乳動物から海洋性生物材料へ切り替えが活発化しました。「国産=安心・安全」のイメージの良さから、今では、国産の化粧品原料は数多く販売されていますが、当時、国産原料はほとんどなく、かつ国産の海洋性アテロコラーゲンを販売するメーカーはありませんでした。そこで、当社が着目したのが気仙沼産の「サメ」。宮城県気仙沼市は、サメの水揚げ量が日本一で、その種類のほとんどがヨシキリザメです。マグロ延縄漁等で網にかかったサメの皮を、化粧品原料に再利用したのは当社が初めてでした。
サメの水揚げ量が日本一の気仙沼市
震災の影響による終売と復活のきっかけ
販売を開始してから約10年が経過し、国産海洋コラーゲンとして各メーカーに認知いただき、安定した販売を行っていた2011年、あの東北地方太平洋沖地震が発生。
サメ加工協力工場が被害を受け、コラーゲンの原材料となるサメ皮の供給がストップしました。急遽サメアテロコラーゲンの終売をアナウンスし、素材を千葉県産のフカヒレに切り替えて対応を行っていました。
ある日、気仙沼の産業復興事業として、気仙沼産素材を利用した化粧品の開発プロジェクトに協力してほしいと、ある化粧品メーカーより相談を受けました。お話を伺ったところ、気仙沼市の水産加工工場を紹介可能とのこと、ここでサメアテロコラーゲン復活の兆しがみえてきました。
ただ、サメの皮は非常に固く加工処理が難しいため、以前は専用の機械で処理を行っていました。震災の影響で機械が使用できなくなっており、従来の製法方法をそのまま踏襲できないことが復活への課題でした。
協力先の水産加工工場を見学した際に、サメの尾びれ上葉部というこれまで使用したことのない面白い素材を見つけ、持ち帰って調べてみたところ、Ⅰ型コラーゲンが豊富に含まれており、体表の皮処理に比べ、加工がしやすいことが明らかになりました。さらに、水産加工会社ならではの前処理方法を教えていただき、これまでの製法に比べ、格段に処理を簡単にすることができました。当社はコラーゲン抽出のスペシャリストですが、水産加工のスペシャリストではないため、当社では発想しえない手法は、目から鱗の連続でした。さらに、尾びれ上葉部は食用としては扱いにくく、他の利用用途を探していたとのことで、環境を配慮した原料ソースであることも判明しました。
製法改良による品質の向上
アミノ酸分析や電気泳動による分子量分布、比旋光度分析による構造解析より、製法を改良した新サメアテロコラーゲンは従来のサメアテロコラーゲンと同様のコラーゲンであることが確認でき、さらに改良によって、従来のものよりも透明度および粘度が高い高品質なコラーゲンが得られることが分かりました。
以上のような経緯より、良質な気仙沼産サメアテロコラーゲンを再び販売できるようになりました。(この出会いをきっかけに、フカヒレアテロコラーゲンの産地も気仙沼産へ変更しました)