素材をそのまま化粧品へ～フリーズドライ～

1.フリーズドライの幕開け

原料や製品の持つ特性を最大限活用できる技術としてフリーズドライがあります。フリーズドライは対象となる原料や製品を一旦凍結したのちに、低温真空下で水分を水蒸気に昇華させ、水分の抜けた乾燥物を得て、使用時に水分を加え溶解・復元する技術です。水分が直接昇華することで凍結乾燥品の形状がある程度維持され、得られた凍結乾燥品は多孔質構造(図1-1)を持ちます。熱を加えずに水分を除くことから、素材を劣化させずに乾燥させることができます。

図1-1　電子顕微鏡による拡大画像(社内資料による)

フリーズドライは非常に身近な場面で用いられています。風味や栄養価を損なわいためインスタントコーヒーやカップラーメンなどの食品分野への利用はよく知られています。他にも軽くて長期保存が可能ですので宇宙食や携行食の加工に利用されています。医療用分野でも、血漿、抗生物質、ワクチンなどの保存に用いられています。また、東日本大震災で津波により水没してしまった文書を乾燥させるために利用されるなど意外な場面でも利用されています。

2.美容成分の効能効果を最大限に活かす

化粧品分野でもフリーズドライは大変有用な技術として用いられています。美白成分として有名なアスコルビン酸(ビタミンC)は、水や空気の存在するところでは経時変化により酸化が進み、効能効果を維持したままでの長期保存は難しい不安定な物質です。ビタミンC配合のフリーズドライ化粧品を常温で約3年保管し、その量を測定したところ、3年前とほぼ変化がありませんでした(図2-1)。

図2-1

また、立体構造を持つ3重らせんコラーゲンは熱に弱く、ある一定の温度を超えますと構造が崩れゼラチン化してしまいます。凍結乾燥させた3重らせんコラーゲンを40℃で1時間保存し、構造を確認(比旋光度測定)したところ、立体構造を維持していました(図2-2)。立体構造を維持した3重らせんコラーゲンは、ゼラチンの約4培、加水分解コラーゲンの約13培の保水力を持っています(図2-3)。
フリーズドライは、優れた効能効果を有しながら安定性や保存性の観点で処方が難しい原料や製品に改めて光を当てるとともに、訴求力の高い製品を世に送り出せる技術なのです。

図2-2
図2-3

３.特長や形状を活かして製品化へ

フリーズドライは物が劣化する要因の水分が昇華し、ほぼ取り除かれていますので、防腐剤量を微量に抑える又は防腐剤フリーにすることが出来ます。そのため防腐剤無添加化粧品や低刺激化粧品にご利用いただけます。また、使用直前にユーザーが一手間をかけることにより、手作り感や出来立て感を楽しめます。
フリーズドライにより、成分が壊れず、常にフレッシュな状態で使用できるため、日々のスキンケアとしては勿論のこと、目元やほうれい線などの気になる部分の集中ケアに使用することもおすすめです。

初期は特殊なフリーズドライ専用容器を用いた生産が一般的ですが、エアレス容器やマルチウェルプレートなど、さまざまな容器も利用されています。
さらに容器内でフリーズドライするのではなく、コラーゲンを主剤としたスポンジから作成するフルフェイス型マスクや、水や化粧水に溶かして使用するシート型の商品が発売されています。このほか、様々な形状の作成も可能であり製品企画の幅を拡げることができます。

4.当社の技術力

当社は、止血材(図4-1)や歯科用材料(図4-2)の医療機器のフリーズドライで培った知見を基に、フリーズドライ化粧品の受託製造加工(OEM)においては20年以上の実績があります。フリーズドライ化粧品の製造には、再溶解性や外観の品質など通常の化粧水にはない課題がありますが、弊社では永年の経験から得たノウハウにより、できる限り迅速で安定した製品のご提供を行っております。

図4-1
図4-2

さらに実製造機と同様の条件で試作ができるプログラマブルラボ機の導入や、山形県鶴岡市と酒田市の二工場体制による供給リスク回避、少量～大量生産までスケーラブルな生産能力でお客様の幅広いニーズにお応えしております。

当社では、フリーズドライで一般的な瓶タイプのフリーズドライ化粧品以外にも、コラーゲンを主剤とした保水性や吸水性に優れ密着力のあるマリブレンマスク (図4-4)や、抗シワ機能評価試験済の水分を含むと溶けてジェル状になる溶解するコーケンパーフェクトアクアジェルシート(図4-5)、キュービックコーケンアクアジェル(図4-6)があります。

図4-4　マリブレンマスク
図4-5　コーケンパーフェクトアクアジェルシート
図4-6　キュービックコーケンアクアジェル

これらの商品は化粧品専門店や量販店の取扱いに留まらず、エステサロンでの施術や新商品および記念の販促品としてご利用を頂いています。
現在、利便性の高い「オールインワン化粧品」が市場を席捲しつつありますが、一手間をかけ原料や製品の持つ効能効果が最大限得られる「フリーズドライ化粧品」の利用を推奨いたします。