抗炎症ボタニカルシールドポリマー「フォリテクト」
無農薬国産ナメコを有効活用した サスティナブル原料「フォリテクト」の新機能
生体の“免疫システム”に着目し開発されたボタニカルシールド成分「フォリテクト」に、抗炎症作用が確認されました。
肌バリア力のアップに加え、即効性※の鎮静作用で、環境の変化に揺るがない健やかな肌づくりをサポートします。
(※) 短時間で高分子被膜を形成すること
フォリテクトとは
フォリテクト(フォリオタミクロスポラ多糖体)は、キノコ(ナメコ)が乾燥や外的ストレスから身を守るために分泌している粘液ボタニカルシールド成分を独自製法で抽出した新規の植物由来化粧品原料です。
水溶性分子にも関わらず、オイル様の感触であり、上滑りやべたつきがない独特の使用感が特長です。
分子量が460万以上であり、ヒアルロン酸の約6倍の保水力をもち、肌への高い保湿効果を期待できるほか、コクのあるリッチな使用感や、洗浄剤に弾力・濃密さを付与できるため、ナチュラルな化粧品処方に適しています。
多糖類の抗炎症効果
当社原料のスイゼンジノリ多糖体のサクランや、キノコに含まれる β-グルカン、海藻のフコイダンのように、天然多糖体には、抗炎症効果、免疫調整、抗アレルギー作用があることが報告されています1)2)。植物が自らを守るために作り出す成分「フィトケミカル」は、体内環境だけではなく、肌の栄養補給および環境を整えるためにも重要であると考えられています。
なかでも、キノコ類は抗炎症・免疫細胞賦活・抗アレルギー等を有するフィトケミカル素材として古くから利用されてきました3)4)。ナメコは免疫機能を高める食材として知られており、ナメコが分泌するヌルヌルとした粘性物質は、タンパク質と糖で構成されており、動物性糖タンパク質であるムチン(※)と類似した特性(保護粘膜)を有することから植物由来のムチン様物質(以下、「植物性ムチン」という)とも言えます。
ナメコのヌルヌル成分は主にガラクツロン酸を主成分として脱水縮合した「ペクチン様物質」と、「ヘミセルロース」の複合体からなる多糖体と考えられています5)が、その複雑な構造ゆえに詳細な研究結果は報告されていません。
(※)生体内に存在するムチンは胃や腸を外界からの刺激や細菌感染から守る役割をしており、生体組織の保護・栄養成分の供給・免疫コントロールのために重要な物質です。
植物性ムチンとは
昨今、植物由来原料のニーズが高まり、ケラチン様効果を有する豆たんぱく加水分解物(例:加水分解エンドウタンパク)を「植物性ケラチン」と、コラーゲン様成分を含むあるいは、コラーゲン様効果(保湿、ハリ、シワ改善)を示す植物性多糖体(例:ナットウガム)を「植物性コラーゲン」と呼称し、動物由来代替原料として使用する動きがあります。
フォリテクトの構成成分を分析したところ、タンパク質と糖から構成されていることが分かり、これは、当社製品であるマリンムチン(イカ抱卵線由来の動物性ムチン)と同様であることが分かりました(図1)。
アミノ酸組成は、マリンムチンが主にPro : Ile : Thr = 1 : 1 : 2 の割合で構成されているのに対し、フォリテクトはバランスの良い組成であることが特徴です(図1-左図)。
また、表面電荷を確認したところ、マリンムチン同様、アニオン性の多糖体であることが分かりました。
その他にも、マリンムチンと同様に肌への保湿効果および、外部刺激から細胞を保護するアンチポリューション効果も確認されており、動物性ムチンの代替として使用可能です。
【図1】 アミノ酸分析(左)と糖分析(右)
社内資料による
なお、フィトケミカルなヌルヌル・ねばねば成分として、山芋やオクラも有名であり、これらも「ムチン」と呼称されるケースがありますが、一般的な植物由来多糖類の中でナメコが最も保湿効果が高いことが報告されおり、フコイダンで有名なメカブエキス以上の保湿力があることが分かっています6)。
フォリテクトの「抗炎症」作用
皮膚は生命を守る最大の免疫臓器であり、異物(外来抗原)が侵入すると、バリア機能として皮膚免疫応答を誘導し、炎症が生じます。しかし、炎症は、肌荒れ、バリア機能の低下、肌の老化を引き起こす要因となるため、過度な炎症を抑えることが肌環境を整える重要なポイントと言えます。
下の図では、炎症を引き起こした細胞にフォリテクトを添加し、抗炎症作用を確認したところ、フォリテクトは、抗炎症剤として医薬部外品の主剤として使用されるグリチルリチン酸2K(GK2)の1/100量、および古くより傷の治癒効果や抗炎症、肌荒れ、ニキビ予防、抗アレルギーなどの生薬や化粧品成分として活用されている化粧品成分である甘草エキスの1/20量で同等の抗炎症作用を示すことが分かりました(図2)。
【図2】 抗炎症作用(NO産生抑制)
社内資料による
また、炎症の原因物質である炎症性サイトカインに対する抑制効果を確認したところ、TNF-α、IL-6、COX-2、NF-κBの発現を抑制することが分かりました(図3)。なかでも、NF-κBは、紫外線の影響で活性化し、角化異常(表皮の肥厚)や色素沈着(メラニンおよびメラノサイトの増殖)、光老化(MMP-1産生によるコラーゲンの分解)、毛穴の目立ちを引き起こす原因遺伝子でもあり、老化を防ぐ「カギ」とも言われています7)。
【図3】 抗炎症効果(炎症性サイトカイン産生抑制)
社内資料による
まとめ
フォリテクトは、動物性ムチン様の物質であり、保湿効果、皮膚保護効果に加え、新たに高い抗炎症効果が確認されました。外的ストレスにより弱りがちな肌バリアの強化、および肌免疫システムの炎症抑制として、肌環境を整えるボタニカルシールド成分「フォリテクト」をご提案します。
製品紹介ページ
https://koken-cosme.com/material/plant/pholitect
参考文献
1)サクランの抗炎症効果https://koken-cosme.com/material/plant/sacran
2)今後の「食」を探る 免疫を整える食品(一般社団法人全国発酵乳乳酸菌飲料協会 資料より) http://www.nyusankin.or.jp/health/pdf/Nyusankin_486_b.pdf
3)食用キノコ中に含まれる機能性多糖の免疫学的測定法の確立とその応用
Nippon Shokuhin Kagaku Kaishi Vol.48,No.11,793~797(2001)〔総説〕
4)キノ コの機能と衛生(水 野 卓、食 衛 誌. Vol. 30, No. 3)
5)山形県産ナメコを用いた新規化粧品原料の開発(FRAGRANCE JOURNAL 2019-3)
6)ナメコエキスの化粧品原料としての有用性に関する基礎研究
(東京医薬専門学校 生命工学 技術科 平成26年度 卒業研究論文)
7)一丸ファルコス社原料「バイオベネフィティ」資料