サクランの応用展開
サクランの応用展開
サクランの最先端
ヒアルロン酸の約5~10倍の保水力をもつ「サクラン(スイゼンジノリ多糖体)」は、保湿・バリア機能・抗炎症効果を有する化粧品原料として広く使用されています。
第10回 化粧品開発展の様子(北陸先端科学技術大学院大学 展示ブース)
サクラン粉体
現在、サクランに新たな有用性が確認され、医療応用やアパレル業界への展開等、幅広い分野で利用検討されています。
例えば、医療応用に関しては、アトピー性皮膚炎の症状改善が確認され、抗アレルギー薬としての国際的な共同開発が進められています1)。また、一軸配向および一軸膨潤性を有するハイドロゲルを形成することから、人工細胞壁や細胞足場材料等の新規バイオマテリアルとしての展開も期待されています2)。
このようなサクランの最先端の研究は、サクラン開発者である北陸先端科学技術大学院大学およびグリーンサイエンス・マテリアル株式会社が主体となり進められています。
天然繊維への応用
レーヨンにサクランを混合することで、繊維の吸水量が約28%向上することが確認され、混紡繊維「サク・レ™」が開発されました3)。従来の機能性繊維には乾燥肌に痒みを与えるなどの問題点があったことから、保水力の高い繊維性多糖体であるサクランが着目されました。
サクランを混合することで抱水性が高まり、綿の約2倍の保水性を有します。また、滑らかでしっとりとした感触が付与され、新規の天然繊維素材として肌着に使用されています。
サク・レ™
消費者のサスティナブルに対する意識の高まりから、素材の機能面だけではなく、環境への負荷や持続可能性が注目されています。スイゼンジノリをはじめとする藻類などの植物体から得られるバイオマス材料は、CO2の排出削減などの観点から、持続的低炭素社会の構築に有効であると考えられています3)。
スイゼンジノリ(学名:Aphanothece sacrum)は、日本固有のバイオマスの一種であり、世界でも極めて希な食用ラン藻です。スイゼンジノリから得られるサクランの機能材料化は、持続可能社会の実現への貢献にもなります。
サスティナブルな社会創りの観点からも、サクランの高性能天然由来マテリアル素材としての利用が期待されます。
参考資料
1) 第10回 化粧品開発展 北陸先端科学技術大学院大学 技術資料
2)北陸先端科学技術大学院大学 桶葭興資,「界面不安定性による超高分子多糖類サクランの一軸配向膜の創製」
3) JAIST プレスリリース(平成29年7月7日)「天然繊維に新風、保湿性抜群 超!しっとり新繊維”サク・レ”」を開発-日本固有バイオマスからの新機能繊維-